2009年4月23日木曜日

医薬品通信販売規制と漢検

楽天が見直しを訴えている「医薬品通信販売規制」と漢検協会理事長の問題。
全く関係ないみたいだが、根っこは一緒だと見ている。

医薬品通信販売規制は"薬害"や副作用の危険性などを絡めて医薬品の販売を「対面販売」だけに規制しようというもの。
これは日本薬剤師会やドラッグチェーン業界などの求めに応じて厚生労働省が省令による規制強化を行おうとしたものだが、法律改正による公の議論を経たものではなく省令という官僚の恣意的規制によるものである点で法律上も問題が指摘されている。
そもそも過去の薬害や大きな副作用などは通信販売によって流通されて医薬品によるものではない。
薬害のリスクが含まれた医薬品が十分な試験を経ないままに医師や薬局を通じて流通し被害者を生んだというのが実態だ。
だから、薬害や副作用などが「通信販売による医薬品流通の危険性」を示唆するものではないし、それよりも医師や薬剤師の医薬品に対する知識不足や流通上のセーフティーネットの不備が指摘されるべきであって、通信販売が危険であるとの主張に論理的な根拠はない。
それらを考えると、今回の規制の根っこには薬剤師会やドラッグチェーンなどの既得権益者を保護し、関係先団体を支配して影響力を維持しようとした一部の官僚の暴走であるとしか思えない。

漢検協会理事長の問題はもっと罪深い。
今回辞任した理事長にはなんら落ち度はないと思う。
むしろ文科省は積極的に彼の功績をたたえるべきである。
漢字能力検定協会は1975年に設立されてかが十数年にわたって任意団体でありながら、なんら行政の支援をうけることなく漢字検定事業を展開し、広く国民に有益な資格として認知される実績を積み上げた。
年末に発表されるその年を象徴する漢字の発表など、「漢字」文化そのものの普及に努めてきたことが今の「漢検」ブランドの浸透に役立ってきたのだ。
最初から文部省の肝煎りで、アメリカの後押しで始められた英検に対しても受験者数で凌ぐようになっているのは私企業が始めた取り組みとしては立派なものである。
それがここに来て問題を指摘されメディアが騒ぎ立てる事態となった。
しかし、事業の創業者が、創業時期の苦労を乗り越えて成功を得たときに多少の贅沢をすることが責められることであるとは思えない。
指摘されている問題にしても、その時々の事業判断や成功の結果としての創業者に対する利益供与としては認められるべきだ。
これが認められないとすれば事業を興そうなどと思う人は皆無になるだろう。

漢検の問題は文科省の横槍ではないのかというのが僕の邪推も含んだ考えである。
英検を凌ぐほどになった漢検に対して、文科省は天下り理事の受け入れなどを迫ったのではなかろうか。
それを前理事長が撥ね付けたのであろう。
その為に文科省は理事長個人に関わることをメディアにリークしたのではないだろうか。
メディアは文化事業の側面をもっているから文科省に対してとても弱い。
そのため文科省からのリークを垂れ流し意に沿うたのだろう。
新理事長は日弁連の会長やRCCの社長を歴任した行政よりの弁護士だ。
RCC時代に支援企業との間での不適切な関係を取り沙汰され懲戒請求を起こされている人物。
そんな曰くつきの人物を理事長に送り込む文科省は早々に官僚OBに挿げ替えることが見え見えだ。

医薬品通販規制にしても漢検理事長の問題にしても、一部の官僚が恣意的に業界をコントロールしようとしているという構造が根っこにある。
マスコミもそれに踊らされていて、医薬品通販はネット通販大手のヤフーや楽天が全力で立ち向かっているのでなんとかなるかもしれないが、漢検は官僚に乗っ取られてしまうのだろう。
漢検の理事長は悔しいに違いない。
事業が上手くいっていなくて、内部の方針の争いによって敗れたのであれば諦めようもあったかもしれない。
しかし、外部から自分の育て成功した事業を奪われたのだから尚更だ。
新理事長が告訴すると息巻いているが、是非とも財界筋から前理事長を支援して欲しいものだ。
漢検ブランドは前理事長によって失墜したわけではない。
漢検を乗っ取ろうと画策した勢力によって毀損させられたのだ。
だから漢検の資格者は別に恥らうことはない。
これから漢検のブランドを更に貶めるようなことを新理事長がやり始めるだろう。
そのことによって漢検以上に「漢字文化」の振興に影が落ちないことを危惧する。

と同時に、一定以上の社会的影響を持つ事業に対する政官界からの圧力がこれほど醜いものなのかと暗澹とするのは僕だけだろうか。

0 件のコメント: