2009年6月4日木曜日

宝くじの統計学

日科技連刊行の「ビジネス数学のはなし」(大村平 著)を読んでいる。実際に試してもいるのだが。その中に「宝くじ」の話があった。
この本が書かれた1995年当時のジャンボ宝くじの期待値(当選金額と当選確率の積の合計)は142円。手元にあった今年の宝くじの期待値も同じく142円だった。当時に比べて一等賞金は3倍以上になっているのに(15年前は一等が6000万円だった)、期待値は全く変わっていない。
面白いものだ。実は、一等賞金が6000万円から2億円になった代わりに、当選確率は四分の一になっている。他の当選金額と確率も調整されていて、142円になるようになっている。
つまり、142円を300円で買っているわけだ。この本によると、一般的に人は確率が低いと期待値以上のお金を払う傾向があるという。さぞかし売り上げは増えたことだろう。パチンコなどで当選確率が規制されているのはこれが理由ということのようだ。過度な射幸性の禁止は人の特性を考えると正しいわけだ。
142円を300円で買うかどうかはそれぞれの価値観だが、当選確率がこれほど下がっても買いたいだろうか?まあ、2億円という金額をみると誰も思考停止にはなるだろうが。良く「夢を買う」という言い方があるが、その夢のプレミアムは158円ということらしい。夢の値段として158円は安い?これも人それぞれ。

行動変革モデル

社内の電子掲示板に書き散らしていた文章から。。。。

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行動変革モデルというのがあります。
「KAPモデル」というのですが、知識(Knowledge)が態度(Attitude)を変え、態度が習慣(Practice)を変えるという主張です。
従来のコンサルタントはこのモデルを採用しています。なので、最初に多くの情報を収集して何をどう変えればよいかという提案(知識)を与えて、それによってクライアントの態度を変え、行動を変えようとします。

しかし、当社でも現実に起こっているように、このモデルは現実を変えることが難しいようです。

そこで、このモデルを逆転させるという発想が生まれてきます。
つまり、習慣(Practice)が態度(Attitude)を変え、態度が知識(Knowledge)を変えるということです。
より実践的に良い習慣(例えば、効率よく運営しているチームや成績を上げている営業の行動)を真似するということです。
ベストではなく比較的良いことを実践して、その中で気づくことが態度を変えて知識となり全体が変わっていくということ。

この場合、リーダーやマネージャーは優れた実績を残している人を力づけて全体に変化を促進していくということが仕事になります。

当社でも成績が良いチームや営業というのが何故実績を上げているのか?その人やチームは他と何が違うのか?ということを調べて"布教"していくというのが必要なんじゃないかと思います。

社内にこそ解決策はある!

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医薬品ネット販売規制を考える

なぜ医薬品のネット販売は禁止されたのか。クスリと政治と選挙の関係:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090602/196502/

この6月に医薬品販売の規制緩和と規制強化が同時に行われた。規制緩和は薬剤師でなくとも「登録販売者」がいれば一部医薬品を販売できるというもの。規制強化は医薬品のネット販売の禁止だ。一方では販売できる人を増やし、一方では販売できない人を増やす。典型的なマッチポンプである。明らかに規制を強化したチャネルから規制を緩和したチャネルに消費を誘導しようという魂胆が透けて見える。

日経ビジネスオンラインの記事では、
「それにしても、天下り先確保のためだけに、パブリックコメントで国民の97%が反対した政策を押し通したという論には無理がある。」
とある。

この規制が政治家が関与する法律ではなく、官僚が恣意的に運用を決定できる省令によって行われたことは非常に大きな問題だ。この規制が「真に国民利益に利する」ものであれば、これほどの反対は起こらないが、記事でも書かれているように規制の根拠が不明確である。ネット販売を含む通信販売業者はこの規制強化について警戒を強める。これを期に官僚が流通量が増加するネット通販に対して規制をしかけてくるのではないかという恐れを持っているのだ。

今回の規制強化には副作用などによる健康障害が発生したことも背景にあるようだ。だから、薬害被害者の団体が規制強化のマスコットとして担ぎ上げられた。だが、考えてみれば薬害の殆どは医師の処方が必要な処方薬によるもので、そもそもそんな薬品はインターネットはもとより処方薬を扱わない薬局ですら関係がない。薬害被害者の団体は規制強化派に利用されたわけだ。

「対面販売での安全確保」の実効性は記事でもルポされているように疑問である。そもそも、医師でもない薬剤師が顔色を窺って病状を「診断」することは出来ない。薬剤師は自己申告される症状を聞いて、その症状に合う薬品を奨める位が出来ることであり、同時に複数の薬品を購入しない限り、複数の薬品を服用することで引き起こされる副作用などを説明することも出来ない。経験的に言っても薬局で薬品を買うときに薬剤師から説明を受けることなど皆無だ。

つまり、仮にインターネットで医薬品の副作用などの機微情報が購入者に伝わらないというのが事実であったとしても、現実の薬局も同じ様に薬品の機微情報を購入者に伝えたりしていないということになる。ネット通信販売業者が主張する様に、購入者の購買履歴をデータベース化することの出来るネット通販であれば注意すべき医薬品の買いすぎなどについて制限をかけることは可能であるが、薬局では個人情報の確認は義務付けられていないので購買履歴を管理することも出来ない。

はてさて、こう考えるとこの規制強化は「国民の安全」にも「流通の効率化」にも繋がらない。記事でも紹介されているように、薬剤師会の意向が働いているのだとしたら、薬剤師会としては「会員の雇用確保」が目的なのであり、それは「国民の雇用確保」にも繋がるわけだから結構なコンフリクトだ。でも、考え方を変えてみれば、医薬品通販の流通量が拡大すれば、購入者の服用にあたっての相談とか通販サイトの医薬品機微情報データベースの管理など今までの薬局ではしていなかった新たなサービス需要が生まれるわけで、薬剤師が「今までの仕事」による雇用は失うかもしれないが、「新しい仕事」による雇用は生み出されるわけだから、ネット通販に反対する理由はなくなってしまうと思うのだが。

2009年6月2日火曜日

元「あのねのね」原田伸郎さんを銃刀法違反容疑で書類送検へ

元「あのねのね」原田伸郎さんを銃刀法違反容疑で書類送検へ(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090602/crm0906020032001-n1.htm

というニュースで見てみたら大した話ではない。
原田氏がローカル番組で地域情報の取材中に猟友会の人から猟銃を渡されて数秒間手にして感想を述べたというもの。
生放送されていたらしく、本人にも渡した猟友会の人にも番組制作側も銃刀法の解釈がこれほど厳しいとは認識していなかったのだろう。
まあ、一般的には「ちょっと持たせて」「いいよ」といったやり取りはあるだろうし、それが社会通念的に許されているのが実態だが、県警としては「啓発の意味もこめて」立件するのだそうだ。啓発って「見せしめ」のこと?

ならば啓発の意味もこめて5キロの速度違反であろうが検挙して欲しいものだ。

銃刀法違反はこんな軽微なことに血道をあげるのではなく、密輸や密造などの拳銃の摘発や殺傷力の高いナイフなどの流通制限など他にもやることはいくらでもある。

Yokomine式保育

この前の日曜日のフジテレビ系列「エチカの鏡」で幼児教育に関する話が放映されていた。「Yokomine式保育」なるもの。プロゴルファー横峯さくらの伯父横峯吉文氏が提唱、実践している教育方法で幼稚園児が逆立ちして歩いたり、跳び箱10段を跳んだり、絶対音感を身につけたりという成果が上がっているのだとか。全国でもこの教育方法を取り入れている幼稚園や保育園があるのだそうだ。

この番組で横峯氏が言っていた「やる気をおこす四つのスイッチ」というのがある。
1.子供は競争したがる
徒競走で必ず順位をつけるなど、競争心を刺激してあげる。
こうすることで向上心や悔しさが出てきて、もっと自分から頑張るそうです。
2.子供は真似したがる
通山保育園 では真似したがる子供の特徴を刺激して、
簡単な音符から真似させ、絶対音感を身につけているのだとか。
3.子供はちょっとだけ難しいことをやりたがる
子供は難しいことは嫌がる。簡単なことだと飽きてくる。
だから、ちょっとだけ難しいことをやらせるのが良いそうです。
こうして徐々にレベルを上げることで、自然と難しいこともできるようになるとのこと。
4.子供は認められたがる
子供に"達成感"を与えてあげることで、
「次もまた頑張ろう」という気持ちにすると良いそうです。

子供はというのを「人は」に変えても十分通用するもので、部下の教育とか組織管理というのも基本的にはこれと同じだ。

だとすると、

1.部下や組織を競争させる
2.部下や組織に模倣を推奨する
3.部下や組織に少しだけ難しい目標を与える
4.部下や組織が目標を達成したら褒める、表彰する、社内報に載せる

結構よい組織運営方針だと思う。

2009年6月1日月曜日

企業の未来

GMが破産法の申請をする可能性が濃厚になっているという。クライスラーは申請済みだが、これでアメリカの経済を支えると自負する自動車産業ビッグスリーのうち二つが破綻したことになる。フォードの先行きがどうなのかは分からない。しかし、GM・クライスラーよりは良い結果を迎えるのではないかと思う。

ビッグスリー各社の成り立ちを見てみるとそれぞれに特徴がある。

GMは創業当初から「持ち株会社」であったのだそうだ。そのため創業後短期間のうちに当時100社を超えていた自動車会社を買収していった。GMが多くのブランドを抱えているのは、その買収の歴史を示しているのである。
クライスラーは先進的な技術を使った自動車会社として成長を遂げた。その技術力で得た業界トップの地位を背景にヨーロッパを中心とした自動車メーカーを次々と買収したが、比較的ブランド力のない小規模の会社ばかりを買収したために経営統合の効果などを出すことが出来ずに低迷した。
フォードは他の二社と違い、創業一族が一貫して経営権を握っている。そのことは伸び悩みを招いたこともあったが、概ね安定した経営が続いてきた。一時社長となったアイアコッカは創業一族との対立でクライスラーに去り、クライスラーの繁栄と転落を演出したのだから面白いものだ。

そして、ビッグスリーのうち創業一族が残らない二社が破綻の憂き目にあっている。

これは何を示すのだろうか。

もちろん、創業一族が残る、所謂「ファミリービジネス」こそが持続性のある企業となるとは言わない。創業一族が後継問題を解決できなくて破綻していく例は枚挙に暇がない。ただ、フォードが、そしてトヨタが、創業一族が経営に関わり続けることで創業の精神を忘れることなく続いているということも事実だろう。

大きな決定権をもった創業者がいることは一方で独善的になるなどの弊害もある。経営権が分散して多数の利害関係者が最良の選択を促すという株式会社の良い点は、今のところ官僚制によって発揮されていない様に思う。GMにしろ、クライスラーにしろ、中長期を見据え、創業からの歴史の連続を踏まえた上で意志決定をする構造はどこにもない。この株式会社という構造の限界を人間はどうやって解消していくのだろうか。