2011年5月26日木曜日

連続性で見るべきものを非連続に見、非連続で考えるものを連続的に考えるヒト

世の中には"連続的"に変化するものと"非連続的"に変容するものとがある。ビジネスで言えば"事業改善"と"事業改革"は連続的な打ち手と非連続な業態あるいは業容変化という違いがある。連続的な改善は「Kaizen」という国際語にもなっている様に今やトヨタ自動車のお家芸だ。しかし、そのトヨタも創業事業である豊田織機を見限って自動車製造に乗り出すのは連続的な発想では辿り着かない。それは「連続的に考えるべきもの」と「非連続に考えるべきもの」があるということだろう。

連続的に考えるものに日々の事業管理がある。前年や前月、前週や前日の結果を評価して何らかの打ち手を考え実行し、その結果を検証して次の手を考えて実行する。この所謂"PDCA"サイクルを回して改善を積み重ねるのは現場責任者だ。粘り強く端々に目配りする実直なタイプが合っている。

非連続な思考を要するのは事業環境の変化によって、改善では追いつかないほど悪化した事業の再生や改革などである。これは今の事業が置かれた環境の徹底したリサーチと深い洞察、あらゆる可能性を排除しない自由な発想が化学変化を起こして発現する。論理的な思考と論理を逸脱する発想を合わせ持ったバイタリティ豊かな人が必要だ。改革は一人では出来ないので周りを巻き込み没頭させるカリスマも必要だったりする。

ところが、連続的な改善を任された責任者が突拍子もないアイデアを振り回してみたり、非連続な改革も求められる人が改善テーマしか持ち出せなかったりする。例えば、コスト改善による収支改善を求められる製造部長が新しいサービスや商品開発に手を出すなどということだ。或いは、抜本的なコスト構造の改革を望まれているのに桁が一つ小さい改善テーマを持って来ることがある。これは一つにはその人の能力が足りないというのが理由だ。

連続的な改善を非連続なアイデアで乗りきろうとする人には基本的なオペレーション分析のスキルが不足しているケースが多い。なので何が問題なのかをデータで把握出来ない。そのために改善すべきポイントが分からず、改善点がないので思い切った手を打とうとする。重要なのは非連続な発想にもデータは必要なので、天才でもない限り、大抵は役に立たないということだ。

非連続に連続的な改善を持ち出す人も基本的なスキルが足りない。データに強い場合が多いので問題を把握しているのだが、アイデアの出し方が分からないので思い切った提案は難しい。しかし、どちらもその責任を負わせた側にも問題がある。能力が足りないものを何の教育も無しに責任を負わせるのは経営者の見識が足りない。

更に、非連続な発想を経営者としての信頼を背景として引き出せないのは経営者の責任だろう。大抵の場合、そういう立場の経営者も追い詰められていて、取り組む課題が混乱していることが多い。何を優先して、限られたリソースを何に注ぎ込むか?

そう。自分が投入出来るリソースが限られていることに気付いてないケースも多い。自分自身の時間も含めて、不調な事業にあっては投入出来るリソースが僅少のことが多い。なのに不要不急のことにかまけていることが多い。

事業にあたって、「連続的な」テーマと「非連続な」テーマがどちらかだけということは少ない。基本的に、連続的な改善で補えないギャップを戦略的に埋めるのが求められる姿だろう。しかし、見栄えの良い非連続な戦略的打ち手に真っ先に飛び付くヒトが多い。今の場面で求められているモードを見極めないといけない。

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