ヤングの「アイデアのつくり方」は古典の域に入っていると思う。
ジェームス W.ヤング 今井 茂雄
ティビーエス・ブリタニカ (1988/03)
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ヤングが解説する方法は単純だけど難しい。ヤングはアイデアを作り出すプロセスは5つの段階で進むと言っている。
- データ集め
- データの咀嚼
- データの組み合わせ
- ユーレカ(発見した!)の瞬間
- アイデアのチェック
この本を読んでいて、「十牛図」を思い出した。十牛図(じゅうぎゅうず)は禅の悟りにいたる過程を牛を題材に示したものだ。十~というだけあって、その段階は10段階になっている。
- 尋牛(じんぎゅう) - 牛を捜そうと志すこと。悟りを探すがどこにいるかわからず途方にくれた姿を表す。
- 見跡(けんせき) - 牛の足跡を見出すこと。足跡とは経典や古人の公案の類を意味する。
- 見牛(けんぎゅう) - 牛の姿をかいまみること。優れた師に出会い「悟り」が少しばかり見えた状態。
- 得牛(とくぎゅう) - 力づくで牛をつかまえること。何とか悟りの実態を得たものの、いまだ自分のものになっていない姿。
- 牧牛(ぼくぎゅう) - 牛をてなづけること。悟りを自分のものにするための修行を表す。
- 騎牛帰家(きぎゅうきか) - 牛の背に乗り家へむかうこと。悟りがようやく得られて世間に戻る姿。
- 忘牛存人(ぼうぎゅうぞんにん) - 家にもどり牛のことも忘れること。悟りは逃げたのではなく修行者の中にあることに気づく。
- 人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう) - すべてが忘れさられ、無に帰一すること。悟りを得た修行者も特別な存在ではなく本来の自然な姿に気づく。
- 返本還源(へんぽんげんげん) - 原初の自然の美しさがあらわれてくること。悟りとはこのような自然の中にあることを表す。
- 入鄽垂手(にってんすいしゅ) - まちへ... 悟りを得た修行者(童子から布袋和尚の姿になっている)が街へ出て、別の童子と遊ぶ姿を描き、人を導くことを表す。
アイデアも最初は何をすれば分からないので、本を読んだり先輩の話を聞いてデータを集めていくところから始まる。色んなデータを集めていくと、知識量が増 えるので「分かった気に」なってくる。しかし、その状態で他の人と意見交換すると、批判に耐えられずにタジタジになったりする。そこで、もっと良く考えて 情報を整理して没入することになる。そうして対象となることに精通して関係者と意見交換をして議論することが出来るようになる。そして、その内に整理して 導き出した理論やコンセプトを意識しなくても話が出来るようになって、忘れていく。しかし、忘れた状態でこそ本当にその人の血肉になっているということ で、ここまで来ればデータに基づいたアイデアが次々と湧き上がってくるようになる。アイデアを人に教えたり、他の人の意見やアイデアについて適切な助言や 批判を加えることが出来るようになる。
ここでのポイントは
- 先人の教えを学ぶ
- 生半可な理解で先に進まない(徹底的に知り、考える)
- 集めた情報とその解釈(咀嚼)が十分であれば、情報を忘れてもその本質は忘れない
「十牛図」は哲学的で難解なので、実践としては「アイデアのつくり方」を踏襲すると良いと思う。
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