2009年6月11日木曜日
自動車動力源の変遷
やがて自動車の動力源は大型で制御の難しい蒸気機関からガソリンエンジンに変わった。この時期にガソリンエンジンと動力源の覇権を争ったのは電気モーターである。
記事では電気モーターとガソリンエンジンの争いに決着をつけたのはフォードによるガソリン車量産であったと書かれている。電気自動車は量産化以前に航続距離の短さが問題であったとも。
だが、この両者の違い、勝敗を分けたポイントはエネルギー源の持ち運びの容易さであったと思う。ガソリンは液体であり、様々な容器であらゆる場所に運ぶことが出来る。一方の電気は保存がしづらく、出来ても保存中のエネルギーロスが大きい。そもそも、動力源に使える電気は自然界には存在せず、その発生に他のエネルギー源からの変換が必要になる。更に、その電気を動力にするにはモーターで運動エネルギーに変換しないといけない。ガソリンが燃焼によって直接運動エネルギーに変換されるのに比べて手間がかかるのだ。
自動車が発達したアメリカは国土が広大で、現在ですら電気が供給出来ない地域がある。そんな環境で、燃焼切れに備えて燃焼自体を持ち運べる自動車に軍配が上がったのだろう。
日本は国土が狭い上に隅々まで電気が供給される環境が整備されている。それを考えるとガソリン車よりも電気自動車の方が適しているのかもしれない。更に、電気から運動エネルギーへの変換効率が改善されると電気自動車の方が利便性と経済性が勝ることになろう。
ガソリン小売会社にとっては保有するガソリンスタンドを電気スタンドに置き換えないといけない。ガソリンスタンドと電気スタンドは安全性の観点から併設出来ないだろう。既存の施設のことを考えるとガソリンや水素燃料を電気に変える方法も有望だが、エネルギー変換効率の問題や技術的に高度になることでトラブルが発生するリスクが増えるという問題を避けられない気がする。
50年後の自動車の主役はどうなっているだろうか?個人的には早く空を飛んで欲しいものだが。
2009年6月10日水曜日
GM再生の方向性
自動車産業はどうかというと、生産性は規模の拡大によって良くなるものの、ある一定を越えると逆に生産性が落ちるようだ。生産に関わるプレイヤーが多く、コミュニケーションコストがかかるからだ。生産性は規模の平方根に比例し、コミュニケーションコストは規模の二乗に比例するので、生産性の向上をコミュニケーションコストが上回るようになるのだ。
だから、単一の製品カテゴリーだけを作っている製造業で大規模な会社はあまりない。ここにトヨタの凄みがある。トヨタはコミュニケーションコストの増加を「トヨタ生産方式」というシステムによって、少なくとも規模に比例している程度に抑えている。
GMにはこういうシステムがないし、直ぐに作ろうとしても難しい。ならば、GM再生の一つの方向性として、複数の会社に分割するという手がある。AT&Tがかつてベビー・ベルに分割した様に。
GMが保有する複数のブランドごとに、分割してしまうのだ。販売網だけを共有する中規模の自動車メーカーに分割してしまう。そうすればコミュニケーションコストも削減できるし、意思決定も早くなるだろう。中には、生産を他の工場に委託する会社も出来るだろうし、極端に先進的な車を作る会社も出来るだろう。
いずれ「ベビーGM」が成長して、強いブランドとして復活した時に、改めてビッグGMに統合し直せば良い。
AT&Tはベビーベルに分割されることで他の多様な通信会社の参入を誘い、市場の活性化と競争によって強力な会社に生まれ変わった。ベビーベルの一社は新規参入者を含む競争相手を買収し、ついには親会社であるAT&Tを吸収して巨大な通信会社になった。GMにも同じような未来が待っている可能性はある。
2009年6月9日火曜日
温暖化バブルが怖い
景気刺激は「環境」がキーワードで、新車購入には補助金、環境対策家電で何に使えるか分からないポイントがつく。アメリカではグリーンエコノミーとか言われていて、ITの世界でもグリーンがついたソリューションがてんこ盛りだ。しかし、ここに来て地球が寒冷化しているのだそうだ。
今年の黒点の活動は低調で、今年の夏は冷夏が予想されている。太陽は周期的に熱くなったり冷たくなったりするらしく、その変化は温暖化ガスの影響など屁でもないようだ。
冷夏になると、昔であれば凶作になって経済が混乱した。今はというと、当時とあまり変わらない。餓死や凍死が頻繁になるわけではないが、冷夏は打撃だ。
例えば、冷たい食べ物、アイスクリームや清涼飲料水などが売れなくなる。服も冷夏では売れない。
クーラーなどの家電も同じだ。冷夏は行楽にも影響する。海水浴も山登りも暑い夏があればこそ盛り上がる。冬に厳冬になれば経済活動自体に影響がでる。外出もままならず、物流も滞る。
今年の冷夏で、消費者が「二酸化炭素と温暖化って関係なくね?」と気づいたら温暖化バブルのはじけ始めだ。政府は消費者心理に無関係に期限が来たら環境補助金や環境減税を止めるだろう。そうすると、人々は温暖化に実態が無かったことに気付く。
飛ぶ様に売れていた環境商品はあっという間売れ残り続出。メーカーには設備投資の償却だけが残り、産業界は大きなダメージをくらう。
バブルも三回目だと驚きも薄れる。四回目だと慣れっこになりそうで怖い。
狭い日本、そんなに急いでどこに行く?
http://www.nikkei.co.jp/news/main/im20090608AT2C0801N08062009.html
「東海旅客鉄道(JR東海)の松本正之社長は8日、2025年に首都圏—中京圏で開業を目指すリニア中央新幹線の途中駅について「1県に1駅ずつ設置することが適切」との考えを明らかにした。」
夢の乗り物、リニアモーターカー。乗り物が浮いて滑るように走るというのはワクワクするような話だった。それが2025年に実現化するというのはちょっと明るいニュース・・・なのか?
リニアモーターカーは時速500キロで走るのだそうだ。今の新幹線では300キロがいいところ。それでリニアの方が静かとなれば快適な旅になるだろう。けど、東京−大阪で1時間程度ってなると快適も何もない気がするが。
んで、東京−大阪で各県一駅ずつ止まるとすると、8区間を運行することになる。平均すると60キロ程度が駅間の走行距離になる。そこで、加減速している時間はと考えると加速度が毎秒時速1キロだとすると8分ちょっとでその間に35キロ近く走ってしまう。毎秒3キロだと3分弱で12キロ位が加減速距離。毎秒6キロで1分半の6キロ。感覚的には毎秒6キロの加速が合理的なように思う。
でも、加速度6キロってジェット機の加速度の7割くらい。結構きつい衝撃がある。
「途中駅の建設費は「受益の観点から地元負担と考えている」と説明。」
地元負担は結構高額になるはずだ。それでも東京から「ちょっと大阪まで行って来る」と一時間そこそこで行ければ便利な気もする。しかし、そんなに緊急の用事ってあるんだろうか。しかも新幹線よりかなり割高になることが分かっているのに。今の時代、テレビ会議などのコミュニケーションツールが普及している。それでもお金をかけてそんな短時間で行くというニーズを持っている人はプライベートジェットやヘリコプターでもいいのじゃなかろうか。
そんなに急いでどこに行くんだろう?
鳩山更迭を決断するとき
鳩山総務大臣=総務省郵政官僚にも言い分はあるだろう。
「ユニバーサルサービスを提供するには国営でなければいけない」
確かに営利会社になれば収支が合わない場所の郵便局を閉鎖するなどのリストラをするかもしれないという可能性はある。でも、物流ネットワークの価値というのは網の目がどれほど広く細かく拡がっているかという点であって、郵便局ネットワークのカバーエリアを削ることが企業価値を損ね、収支を悪化させることは経営者は知悉しているわけで簡単にやめるわけがない。つまり官僚は民間を信用していないということで、民間は直ぐ手を抜くから自分達が監視しなきゃ、いや自分達がやらなきゃと思っているわけだ。でも、その官僚が企画した「かんぽの宿」は経営的に破綻しており、赤字補填に税金が使われているということを忘れてはいけない。
さてさて、この問題は政治と行政、メディアの関係を考える格好のケーススタディになるだろう。
新聞やテレビは鳩山大臣を正義の味方として演出したいようだが、色々と馬脚を表す人なのでなかなか。。。
っていうか鳩山大臣は自治担当大臣として地方経済とか自治体行政とか色々とやることあるんじゃないの?と思う今日この頃。
んで、幾ら仲良しでもそろそろ見切り時じゃないの?麻生さん、とも思う。
仲良しっていうと安倍首相時代も内閣を互いに良く知る同士で固めたので「仲良しクラブ」と揶揄された。それは今も同じなんじゃないか?
鳩山大臣は悪党面なのに妙に人気があると思われているようで、麻生首相も更迭するのには決断が要るのだろう。でも、そこで切れないと麻生首相自体の指導力に疑問が指摘されるようになるだろう。
鳩山更迭で「行政改革を確実に実施する」ということを内外に示して欲しいものだ。
2009年6月8日月曜日
混迷の郵政社長人事
経営委員会が続投を支持し、政財界でも支持されている西川氏の続投を担当大臣である鳩山氏だけが反対している。
反対するポイントは「かんぽの宿」問題であったり、「郵便特別割引に関わる不正」問題であったりする。
麻生首相は鳩山氏を説得できないでいる。
鳩山氏は西川批判をぶち上げた手前、引っ込みがつかない。
与謝野氏が言うように、政府にとって郵政民営化は「小さなこと」であり、総務大臣としては地方経済の回復など重大なことが沢山ある。
「かんぽの宿」入札には不正は認められず、民営化前から続く「割引不正」は西川氏の責任ではなく、あぶりだされた問題を解消するのが責務である。
という具合に、鳩山氏は追い詰められているように思うが、どうも周囲から聞こえてくる声にバイアスがかかっているらしく、世論も続投に反対していると思っている。
仮に、鳩山氏の横車が通って西川氏が退陣するようなことになった場合、自民党は危機的な状況になる。
民営化をはじめとする行政改革の歯車は逆転し、道路行政も悪化するだろう。
民間企業は政策の先行きに不安を感じ、多くの企業が付加価値を生む企業活動を海外に移すかもしれない。
鳩山氏は元々国営企業であったとはいえ、一民間企業の経営に国家が介入できるということを主張している。
そのことに不安を抱かない財界人はいないだろう。
麻生首相は財界からそのことを突きつけられているに違いない。
麻生首相の選択がどうでるか。
鳩山更迭で決着して欲しいものだ。
地域に根ざさない国会議員って良いものだろうか
選挙のコスト削減を:勝間和代のクロストーク - 毎日jp(毎日新聞)
勝間和代がテーマを挙げて実名によって意見を表明するコーナー。
今回のテーマは「選挙」。
選挙や政治家がテーマになると以下の様な意見が出てくる。
曰く、
「国会議員は特定の地域に利益誘導になってはいけないから、比例選挙にした方が良い」
「特定の血統によって政治が壟断されてはいけないから世襲を制限しないといけない」
「理念や政策をマニュフェストで示して選ぶ方はそれを評価して投票すればよい」
など。
つまり、国政政治家は
1)天下国家を語るのだから地域選抜ではいけない
2)特定の血統が国政を独占してはいけない
3)理念や政策によって選ばれるべきだ
ということだ。
果たしてそうだろうか?
政治家ってなんだろうということを考えてみると、身近な存在で例えれば企業経営者だ。
企業経営者に必要なことは「不安定な経営環境の中で決断をする能力」「選択したことに対してどのリソースを割り当てるかを判断する能力」「多様なリソースを選択した目標に向かって駆り立てる能力」である。
もちろん、この上に経営理念を示すなどの「コンセプト能力」も加わるが、概ね経営者に必要なのは決断・判断・モチベートであると思う。
この中で最も重要なのはモチベート力であると思う。
たとえどれほど素晴らしい理念や政策を持っていたとしても、それを実現するために多くの(大物や先輩など手ごわい)政治家を巻き込み、(海千山千で吝嗇な)官僚に知恵を振り絞らせることが出来なければ画餅に過ぎない。
モチベート力を判定するのに選挙というシステムはベターである。
政治にも社会にも特定の関心を示さない人も含めて、多くの有権者を惹きつけ投票所に駆り立てることが出来なければ政治家になっても政策を実現することは出来ないだろう。
有権者を投票所に駆り立てるには有権者の最大の関心事に対して政策を約束することが必要である。
それはその地域の問題に根ざしたものであろうし、それを取り上げなければ有権者は政治に何ら期待をしなくなる。
国家理念や国家政策は有権者にとっては遠すぎる。
理念によってだけ政治を語ることも危険である。
理念なき政治よりも理念だけの政治の方が危険なのは我々の歴史が示している。
そもそも国家というものが地方の集まりの中に存立し、地方がより小さなコミュニティによって形成され、コミュニティはその土地に根ざした郷土愛によって成り立っている。
だから国政政治家は地方を地盤とするべきであり、その利害をもって国政で戦い、結果として国家全体でより良い選択を見つけ出すべきなのだ。
それを地域に根ざさない、国家というシステムにだけ根ざした政治家で政策を論じるというのは危険だと思うのだ。
そういった国民の生活から遊離した政治体制は共産主義であれ、社会主義であれ、失敗していることを忘れてはいけない。
だから、国政を預かる人間は、国民の代表としての特定地域の有権者の意を十分に受けるべきであって、その中には身勝手なものもあるだろうから、それを政治家としての見識の中で取捨選択し国会の俎上に上げて議論していくべきなのだろう。そして、そこで有権者を魅了した力で賛同者を内外に作り出して実行していく力をこそ政治家の評価軸としたいと思うのだ。