2009年6月10日水曜日

GM再生の方向性

「新生GM」のCEOにAT&Tの元CEOウィッテーカー氏が就任するという。氏はAT&Tの前身の一社のCEOを務め、相次ぐ買収で今のAT&Tを作った。インフラ産業である通信ビジネスは資本集積によって利益が増大する。ネットワークの維持コストは規模に比例するが、ネットワークの利用量は規模の二乗に比例するので規模の経済が働くのだ。
自動車産業はどうかというと、生産性は規模の拡大によって良くなるものの、ある一定を越えると逆に生産性が落ちるようだ。生産に関わるプレイヤーが多く、コミュニケーションコストがかかるからだ。生産性は規模の平方根に比例し、コミュニケーションコストは規模の二乗に比例するので、生産性の向上をコミュニケーションコストが上回るようになるのだ。
だから、単一の製品カテゴリーだけを作っている製造業で大規模な会社はあまりない。ここにトヨタの凄みがある。トヨタはコミュニケーションコストの増加を「トヨタ生産方式」というシステムによって、少なくとも規模に比例している程度に抑えている。
GMにはこういうシステムがないし、直ぐに作ろうとしても難しい。ならば、GM再生の一つの方向性として、複数の会社に分割するという手がある。AT&Tがかつてベビー・ベルに分割した様に。
GMが保有する複数のブランドごとに、分割してしまうのだ。販売網だけを共有する中規模の自動車メーカーに分割してしまう。そうすればコミュニケーションコストも削減できるし、意思決定も早くなるだろう。中には、生産を他の工場に委託する会社も出来るだろうし、極端に先進的な車を作る会社も出来るだろう。
いずれ「ベビーGM」が成長して、強いブランドとして復活した時に、改めてビッグGMに統合し直せば良い。
AT&Tはベビーベルに分割されることで他の多様な通信会社の参入を誘い、市場の活性化と競争によって強力な会社に生まれ変わった。ベビーベルの一社は新規参入者を含む競争相手を買収し、ついには親会社であるAT&Tを吸収して巨大な通信会社になった。GMにも同じような未来が待っている可能性はある。

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