2009年6月15日月曜日

パッケージとスクラッチ−企業の基幹システムコンセプトの考察

企業がシステムを導入するとき、最初に、あるいは最後に問題となるのは「パッケージ(出来合い製品)にするか、スクラッチ(一から開発)にするか」ということである。一方は「市場で稼動が実証された安価な先進的な製品を導入することが出来る」とされ、もう片方は「自社の独自性や特殊性に応じた細やかなシステムを構築できる」とされる。しかし、この様な紋切り型の説明を含めて企業が基幹システムを検討する時に何を基準として選択するべきなのかということについて考えてみるべきだ。

企業で行われていることを、多少単純ではあるが、二つの軸で分けるとすると「変わりやすい<=>変わりにくい」と「フロントエンド<=>バックオフィス」という様になる。この中で「変わりにくいバックオフィス向け」は最もパッケージを採用しやすい。仮にスクラッチで開発したとしても、長期にわたって変更を行わないため、変更が必要になったときのオーバーヘッドが大きく、コストが最終的に割高になっていく。また、この種のシステムは会計や人事など公的な規則や法律に即したものである場合が多く、企業による独自性も出にくいので汎用的なパッケージで十分なのである。
「変わりやすいバックオフィス」向けというのはそれほど多くない。請求書の様式など取引先との関係によるものが多いので、個別の対応が必要にならざるを得ず、事毎にシステム開発をするケースがまだある。しかし、この種のものにも実は半製品ともいえるパッケージが沢山リリースされている。帳票をエンドユーザが開発出来るようになっているツールやデータの変換ソフトなどである。汎用的でありかつ特殊用途でも応用できるシステムを選定して導入するべきだろう。ただし、この種のツールは会計システムなどに比べると割高である。実際に利用する頻度などによって、導入するかどうかは検討するべきだろう。その手の半製品を使って開発業務を提供する会社もあるので、それを利用するのも手である。
「変わりにくいフロントエンド」は顧客との情報交換や社内の情報共有のために採用される、所謂情報系と呼ばれるものである。比較的軽く見られがちだが、一連の情報化の波の中で最も効果を発揮したシステム群であると思う。なので、システム領域で最も目立つ製品群であるとも言える。
「変わりやすいフロントエンド」は企業やその業界の商習慣が埋め込まれていることが多い。そのため最もシステムかもしづらく、システム化した際の変更も多い。そのため、システム化されていない最後の砦であるとも言える。逆に言えば、この領域のシステム化を実現できるかどうかが企業の競争力の源泉になってもいるのだ。だから、このノウハウだらけの業務をシステムに埋め込むのはその会社にしか出来ないことで、スクラッチ開発にせざるを得ず、パッケージは採用するべきではないだろう。

そう考えていくと、四分割した領域のうち、どうしてもスクラッチにしなければいけないのは一つだけで大半のシステムはパッケージを導入した方が良いだろう。スクラッチで開発する部分は自社の競争力になっている部分であって、それ以外は多少「システムに業務をあわせる」必要があるだろうが、パッケージ導入で十分であると思う。
ノウハウをシステムに埋め込むことに抵抗されることもある。ノウハウをシステム化した途端競争力でなくなるというのである。しかし、ノウハウが人についている限り、それはその人の競争力であっても会社の競争力であるとはいえない。その人がいなくなれば無くなってしまうほどの競争力であるのだ。だから、ノウハウはシステム化しなければいけないし、システム投資の大半はその部分に注がれるべきだろうと思う。

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