2010年3月30日火曜日

UNIQLOをデフレの元凶の様に言う愚論

サピオの読者投稿欄に「ユニクロがデフレの悪玉という記事が増えた」というものがあった。投稿はそんな記事を批判したものだが、整理をしておかなければと思った。

UNIQLOが(正確にはファーストリテイリングが別ブランドで)1000円を切る値段でジーンズを発売出来るのは、生産国(中国とかアジアの国々)の人たちを低賃金で酷使しているから、とか、国内でも安い賃金で労働者を虐げているという話が流布されている。安く海外で作るから国内の雇用が失われているとも。さて、ここで価格とか利益というものを良く考えてみないといけない。価格の構成は、ざっくり書けば以下の様になる。

価格=限界費用+粗利益…A
粗利益×販売数量=固定費+営業利益…B
営業利益=営業外損益+純利益…C

純利益は事業のトータルの儲けとなり、配当や投資の原資となる。(実際は会計上はコストが発生するが、実際に現金の移動を伴わないものを除いた営業キャッシュフローが投資の原資となるが)

この式で「限界費用」とは商品を一単位売るのにかかるコストのことでユニクロの場合は工場から仕入れる服がこれにあたる。ユニクロを批判する人はこの工場からの仕入れが安く買い叩かれていると主張する。ユニクロは確かに最安値の仕入れ価格で工場から買っているだろう。だが、そこには理由がある。

工場の経営を同じ様に考えてみると彼らの限界費用は生地や糸となる。この生地や糸を彼らは大量に安く仕入れることが出来る。ユニクロが製品を全部買ってくれるからだ。ユニクロが買えば買うほどB式の左辺が大きくなり右辺を賄える様になる。右辺が変わらなければ、数量が大きくなると粗利益を小さくすることが出来る。

粗利益が小さくなれば、限界費用は変わらないので価格は下げられる。ユニクロ自身も強力な販売力で数量を大きくすることで粗利益を下げている。ユニクロにとっての固定費は主に販売員なので、店舗あたりの店員を少なくする努力が重ねられている。例えば、ハンガーに商品を吊るしておくと客が広げた商品を畳む人手がいらないので店員を減らせる。GUの店舗はこの方法でユニクロよりも安い価格設定が出来る。

斯様にユニクロは大量販売と低コストオペレーションを徹底することで低価格を実現している。ユニクロのデザイナーは他のブランドよりも条件は良くないのだそうだ。その条件も偏に低価格で商品を提供するためだ。

ユニクロが低価格で商品を提供することは消費者の可処分所得を増加させ、消費者を豊かにする。販売店が増えて雇用も増やす。ユニクロはアパレル業界が「当たり前」の様に思っていた高価格と高利益に挑戦したのだ。そのイノベーションは見習われこそすれ、批判される様なものでは決してない。

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