2010年9月2日木曜日

便乗値上げと正義と

NHKで有名になったサンデル教授の「これからの正義の話をしよう」の最初のテーマは「便乗値上げ」だ。災害などにあたって生活必需品やサービスの価格が通常の何倍にもなるというのは"フェア"か?という問題だ。この問題では品物やサービスを買う側の理論は分かるが、供給する側の理論の考察はどうであろうか。

例にあげられたハリケーンによる被害。その渦中では供給する側も被災者である。買う側と同じ様に明日の生活に不安を抱えている。というのもアメリカの様な国では自然災害によって社会インフラが破壊されると域外からの供給がストップする。あっと言う間に供給不足となる。

小売店ならば次の仕入れが不透明なので、今ある品物でいつも以上に稼がなければ従業員に給料が払えなくなる。サービス業なら超過需要に対応する為に休むことが出来なくなる。価格の高騰は需要を制限し、供給する側を守るために働く。

サンデル教授も言うように、高価格は超過需要に対する域外からの供給を呼び込む為に働く。「いや、価格が上がらなくとも域外の供給者が来るという道徳が必要」というのは正しい。しかし、その正しさは域外の供給者が自分の顧客を捨てて馳せ参じることまで許すだろうか?

ここに「政治」が登場するのではないか?事前に規制を行うことで歪みを助長するより、事後に補償したり、余りにも酷いケースでは返金させるなどすれば良いのではないか。超過需要に応えた供給者はそこでの稼ぎを原資に不便をかけた顧客に値下げなどをするかもしれない。

便乗値上げが禁止された場合、そこには供給統制が登場する。配給である。平等な分配を目指すほど、統制する力は強化される。

それは「政府」に短期的に許されるかもしれない。であれば、便乗値上げを"禁止"するよりも"非常事態"を宣言して政府が流通を統制するべきだろう。しかし、政府は「思った以上に」賢くない。変化への即応は限定されていて、すぐに行き詰まるだろう。それならば、流通を自由にさせて事後的に不平等を是正する方が良いと思う。

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