2009年1月15日木曜日

「かんぽの宿」売却問題

日本郵政がかんぽの宿をオリックスに一括売却するというのに鳩山総務大臣が反対している。オリックスの宮内会長が郵政民営化を推進した立役者というのが理由だ。

オリックスへの売却は競争入札で決まった。次点との入札額の差は大きかったという。合理性から言えば、入札額が高い者に売却することに何か問題があるのだろうか。

入札額の開きから不正の可能性は低い。日本郵政から売却金の一部がオリックスに裏金で渡るなら問題だが、これだけ世間の耳目を集める取引でそれはないだろう。

オリックスが他よりも高い入札額で買収するということは、彼らにはかんぽの宿を再生する責任が降りかかってくる。一括ということは利用者が多いところも少ないところも一様に引き受けるということになる。その再生は容易ではない。

オリックスは郵政民営化に関わった関係者がいる企業として、社会的責任をお金を支払って負ったとも言える。
日本郵政としてもグループの資産有効活用を目指す観点から言えば、本業との関わりが薄いかんぽの宿を売却するのは当然と思える。

政界では「経済人は自らの利益のみを追求するのか」という批判があるらしい。誤解を恐れずに言えば、経済人は自己の利益を社会の規範に則って追求する。それでなければ持続可能な企業運営は出来ない。ただ、経済人は利益の源泉が従業員と消費者であることを良く知っている。彼らの幸せの実現なしには利益は生み出せない。

取引の度に従業員や消費者の審判を受けるという点では、企業と企業人は政治家よりも頻繁に世間の評価を受ける。数年に一度選挙をする政治家とは比べものにならない。

政治家の宮内会長への批判には、「商は賤業、虚業」という政治家や官僚の儒学的な価値観が見え隠れする。損失が出ても社会のため、市民のためとは「美しい」考えだが、それでは持続しない。国家財政が破綻しても日本郵政が破綻しても迷惑を被るのは国民だ。鳩山総務大臣はその疑問に答えて欲しい。

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