2009年4月1日水曜日

楽天・TBS決裂はTBSの我執によって経済合理性が守られなかったことが原因

「楽天、TBS全株売却へ 提携断念、買い取り請求」(IT Mediaより)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0904/01/news014.html

TBSが株主の持ち株数が制限される「認定持ち株会社」に移行することに伴い、楽天がTBSとの提携実現を断念した。楽天・TBSともに株価は上昇していて、市場は提携解消を好感しているようだ。しかし、楽天の持ち株の買取請求により買取価格の交渉次第では株価もどう推移するか分からない。

この半年でTBSの株価は1,800円から1,300円まで28%前後下落していて、楽天は20%程度下落している。TBSの株価は12月に急降下しており、これは株主総会前後のことなので認定持ち株会社移行が嫌われたのと、景気悪化による広告収入下落で収益が悪くなるという予測が影響したのだろう。3月に株価が持ち直しているが、これは独占放送したWBCの影響と思われる。楽天は年明けから徐々に株価を落としていて、これはTBSとの提携断念が業績に与える影響が市場に理解されるのに時間がかかったということなのではないかと思う。

この顛末ではTBSの経営陣の我執によって、TBS・楽天双方の企業価値が落ちてしまったというのが僕の評価だ。そもそも、楽天が株式の取引によりTBSの筆頭株主になったことは正当な話であった。それでもTBSは筆頭株主である楽天との事業提携どころか共同事業程度の話にも乗らず、経営を握り続けた。楽天が「通信とメディアの融合」というコンセプトを掲げてTBSにも市場にも提案を繰り返したのに比べて、TBSの経営陣は従来の事業運営を変えることなく、コンテンツ争奪に明け暮れた。結果的に、WBCというコンテンツが大当たりして一時的に業績が復活したかに見えるが、現実的には広告収入の激減、高額な人件費、番組制作上の構造上の問題は一向に改善されていない。

地デジ移行によって、ハイビジョン映像を送り出せるようになったものの、基本的に放送のやり方自体が変わったわけではない。相変わらず番組制作や報道取材における不祥事は続いており、多少映画やコンテンツ販売による収入の多様化をはかったとはいえ、基本的に広告頼みという構造は変わっていない。その構造を変えるのに外部の血を入れることは決して悪くない選択であった。放送局は基本的にプロパーによって支えられていて、外部の血が社内に入ることはほとんどない。結局は旧体制を維持することが目的でもあり、その体制が「電波法」によって守られているために愚鈍な経営が通用してしまう。楽天のチャレンジは評価できるが、そもそも「変わる気がさらさらない」業界に「変えることが競争力」という企業が協力しても良い結果は出なかったであろう。

楽天の今後のオプションとしては、思いっきり高くTBSに株を買い取らせ、独自に放送局を立ち上げることを目指した方が良い。その際に放送業界の人間は一切使わないこと。彼らは努力もなく高収入を得ることに慣れているし、業界を「荒らす」ことはしたがらない。NTT出身でKDDI、E-Mobileと業界を荒らし続けた千本氏の様な人でもない限り、業界人に期待するのはやめた方がよい。それよりは全く関係ない業界やメディアに不満をもっている人の中から人材を得たほうが良いだろう。

0 件のコメント: