2009年3月5日木曜日

今の政治状況は総合商社同士の一昔前の競争入札みたいなものだ

自民党VS民主党

まるでアメリカやイギリスの様な二大政党制が出来ているかの様に見える日本の政治状況。でも違うところがある。それは二つの政党の間に差があまりないということ。自民党と民主党では支持基盤はほとんど変わらない。自民党の支持基盤が企業=資本家、民主党が労働組合=労働者という違いがある様に見えるが、西松建設の献金疑惑で明らかになった様に企業は自民党にも民主党にも献金を行っている。労働組合の組織率が下がっている現在、労組の支持=労働者の支持とは言えない。
アメリカやイギリスと違うのは日本には伝統的な意味での身分社会が崩れていることが上げられる。アメリカとイギリスの資本は伝統的な貴族階級に多くが占められている。イギリスは言うまでもなく、どんな出自であれ成功の機会が与えられると言われるアメリカでも資本家の多くは貴族に出自を持つ。

日本ではどうか?日本の伝統的な貴族階級は基本的に貧乏である。資産をあまり持たない。貴族の資産の根本は土地だ。広大な土地を保有し、小作人や奴隷を働かせて生産物を売却し、その利益によって長期間に渡って富を集積してきた。
日本では、いわゆる貴族は武士階級によって土地を奪われた。武士は徳川政権によって富を継続的に消費させられることで、江戸時代を通じて裕福では無かった。
その徳川政権も幕末の混乱期に富を放出し、明治になると全ての土地を奪われた。商人はどの時代にもいたが、その隆盛は短命であり、明治時代に政府の要請によって急成長した財閥も第二次大戦後の解体によって弱体化した。
今、日本で大企業と呼ばれる多くの会社は戦後に創業もしくは第二創業したものばかりで、それぞれの創業者は立志伝中の人物として多くの尊敬を集めている。また、創業者の跡を襲って従業員が経営者になることもあり、労働者にとって経営者は"身分違い"という感覚はない。

この様な社会背景によって、経営者と労働者、あるいは資本家と労働者という対立の図式は成り立ちにくく、それに伴って政治の対立軸に労使対立が大きな影響を与えることは無かった。それは社会党がついに第一党の座を占めることなく解体してしまったことからも明らかだ。

他国とは違う歴史的背景を持っている以上、日本の二大政党は階級を基盤としたものにはなり得ない。すると、二つの政党の違いは米英に比べて主義主張の違いに依らなければいけない。ところが、自民党と民主党の間には労働者VS資本家ほど強力な違いは見受けられない。自民党が主張していることは民主党も多少の違いはあれ主張しているし、民主党の主張に自民党が党をあげて反対することもない。長期にわたる55年体制と15年前の政変により、保守も革新も流動し、それぞれの政党に混ざってしまった。いまだに純血を守っているのは共産党だけで、ほかの政党には多かれ少なかれ保革両方の血が入り混じっている。
そうなると党全体の主張も保革入り乱れた総花的なものとなる。言ってみれば総合商社の様なもの。総合商社同士の競争入札では提案にも入札額にも差がつかない。勢い価格競争になったり、接待攻勢になったり。あるいは気に入られる様に愛想良くしたり、人気取りに走る。

正に、今の政治状況の様に。

これは恐らく日本で二大政党という構造が成り立ち得るという前提に問題があるのだ。伝統的な身分によらず、主義主張で政党が結成されるとして、そこに何ら前提となる命題がなければ、百家争鳴し政党が乱立することの方が自然である。自民党は戦後の経済成長を導く中で、派閥という百家争鳴装置を発明した。この装置は小沢一郎を自民党からはじき出し、民主党に移植された。
だが、派閥などと分かりにくいことは止めて、もっと明確な主義主張の違いによって小政党が乱立し、時に応じて連立してはどうだろうか?と思う。

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