2009年10月29日木曜日

北欧モデルと都市化

「IKEA超巨大小売業、成功の秘訣」(リュディガー・ユングブルート著 瀬野文教訳 日本経済新聞社発行
2007)を読んでいる。近年日本で出店攻勢をかけているIKEAの物語りだ。戦後間もない創業から世界展開まで詳述されていて興味深い。

IKEAの成長のエンジンとなったのは創業者の特異なパーソナリティだが、成長を後押しした環境を見てみると面白い。IKEAの創業地スウェーデンは「高福祉国家モデル」とか「北欧モデル」とか言われて賞賛されている。IKEAもスウェーデンの成功企業として数多く紹介されている。

IKEAはスウェーデンの社会主義政権が進めた高福祉化の影響を、その創業期に受けている。スウェーデンでは福祉を厚くするために国民の都市への移住が意図的に推進された。広い地域に国民が点在するよりも、狭い地域に集まっていれば福祉サービスを安いコストで提供できるという考えだ。そのため、都市化が進み、多くの国民は日本と同じ様に狭い集合住宅やアパートに住むことになった。IKEAはその様な狭い住宅で安く家具を揃えるには最適な商品を提供して成長していった。

北欧の高福祉社会が都市化を前提としているというのは初めて知った。日本でも少子高齢化に耐える住生活空間を考えた場合、人口の集中による効率的な福祉サービス、行政サービスの供給は必須になっていく。都市化というと東京が思い起こされるが、実は東京は都市としては広範囲に散らばりすぎてあまり集積された空間とはいえない。高層住宅やビルは一部で容積率の問題によって23区の人口受け入れ能力は限界になっている。

福祉サービスの充実を考えると、実際にはもっと無住人地域を増やして、人口密度が高い地域を更に高めていかないといけない。東京にはもっと高層の住宅やオフィスビルが必要で、地方も重点的に高層化、高人口密度化を進めないといけない。住民の近くに福祉サービス拠点を作るよりも福祉サービス拠点の近くに住人に移り住んでもらう方がコストも安いし、手厚いサービスを提供できる。

民主党の高福祉社会を目指す考えは良いことであると思う。また、低炭素社会を目指すということも。ならば、具体的な住生活政策は国民を誘導して人口集積するのが一番であろう。無住人地域は緑化することも出来るし、大規模農業による食料供給基地として機能させても良い。国家全体のモデルとしては、人口が500〜1,000万人の大都市が10程度配置され、その都市の間に農業地帯と工業地帯が続くものだろう。住生活の基盤は都市にあって、特に福祉サービスを必要とする子供と高齢者は都市で生活することになる。壮年者は都市と農業地域や工業地域を行き来する。都市以外の地域でリタイア後を送る人は福祉サービスに対しては都市生活者よりは高い費用を支払わないといけない。貧富の差が出るのはいけないという考え方もあろうが、富裕層がより高い費用を支払ってより良い生活を享受することは妨げることは出来ないし、そのこと自体が産業を発生させると考えれば悪いことではない。

さて、民主党はこの様な国家モデルを構想しているのであろうか?このモデルでは田舎よりも都市に投資を集中させることになり、農業政策も小規模農業の集まりから大資本によるものに転換するので農業票を集められなくなる。その覚悟や如何に!

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