2007年3月6日火曜日

最終処分場問題の本質は地方自治体の財政問題だ

高知県東洋町の核廃棄物最終処分場問題の本質は地方自治体の財政問題を如何に解決するかということにつきる。

そもそも、町長が申請を決断した背景には町の借金を返済するためである。しかし、高知と徳島の県境の小さな町では、産業資源にも観光資源にも乏しく、人口の減少と高齢化をとめることが出来ず、既に背負っている負債を返済する道がなかった。そこに持ち上がったのが、調査するだけで数十億円が支給される「最終処分場」申請だ。町長にすれば藁をも掴む思いだったろう。

核処分場応募の東洋町 調査開始申請を決定

確かに、他のオプションについて十分に検討したのかという批判はあるだろうが、町長が提示した申請案に反対するのであれば、他に町の財政を正常化させる案を示さなければいけない。町民からは反対の声が上がっているが、賛成派の町民もいる。実際にはその勢力は半々だと思う。メディアへの露出は反対派のほうが多いので町民が皆反対しているように思われがちだが、実際には町の財政や自分たちの生活に不安を抱えている人たちは相当数いるはずだ。

拒否条例を直接請求 東洋町核処分場問題、住民が1398人の署名提出
建設拒否条例制定を町長に本請求 東洋町処分場巡り住民

賛成派は印象が悪いのでなかなかメディアでの主張をしづらいと思うが、この際堂々と主張をして欲しい。この問題の背景には夕張市の財政破綻があったと思う。夕張の破綻後の市民の生活の先行きの暗さに衝撃をうけた人たちは多い。その中で、真剣に差し迫った決断として申請をした町長は自治体の長として責任ある人であると思う。

その上、彼は批判にさらされながら蛮勇をもって決断したことに一切の言い訳をしていない。それに比べて、高知県と隣県の徳島県の首長の無責任さはどうであろうか。特に高知県の橋本知事には東洋町の町民の生活に対して一定の責任がある。しかし、橋本知事は東洋町に財政破綻しない道を提案していない。県から財政支援があるわけではない。

処分場調査、不認可を=核廃棄物問題で意見書を採択-高知県議会
文献調査の認可反対申し入れ 東洋町核処分場、飯泉知事ら経産相に

この問題の本質にはこのような地方自治体の財政破綻の回避という問題があるのだ。しかし、総務省をはじめとする国政は弱い自治体は淘汰されて潰れてしまえという方針だ。市町村合併もその流れを後押しするものだった。しかし、地形や生活の関連性など様々な理由から合併することが出来ない自治体も多かったのだ。総務省は思ったほど自治体の数が削減されなかったことから、弱い自治体を破綻に追い込んでしまおうとしているのだ。

この問題は「自治体の財政破綻」と「原子力発電」をはじめとするエネルギー問題に分けて論じるべきだろう。日本のメディアは故意か無作為かこの二つを混同させて「危険な核利用を進める調査申請をした独善的な町長」という像を勝手に作り上げてしまった。相変わらず、日本のメディアはレベルが低いということだ。

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