2009年6月26日金曜日

郵政民営化が良いと思うわけ

あるところで「民営化をする理由は何?」と聞かれたので答えることにした。

国営企業が国営たる理由は何だろうか。三つ考えられる。

1)その事業が国民の福祉に欠くべからざるものであること。
2)その事業が民間企業が展開することが出来ないほど大きな投資が必要であること。
3)その事業が経済合理的には国民が贖えないほど高い価格でしか提供出来ないこと。

郵政三事業をみてみると、この三つを満たすものは一つもない。まず銀行事業である。今や3大メガバンクもあれば、地銀も提携などで力をつけ、地方の辺境にも出張所などのネットワークが張り巡らされている。テレホンバンキングもネットバンキングも地方の不便さを感じないほどだ。地銀同士、メガバンク同士のネットワークもあり、セブン銀行ではATM利用料が無料になるケースがあって、全国サービスのゆうちょがある必然性がない。それでも銀行の支店やコンビニがないという地域には、それこそ官営で金融機関の共同窓口を開設すれば良い。

簡保は全く必要ない。保険の金融機関窓口販売やネット保険など様々な保険があって簡保がなくとも保険サービスがなくなるとか、国民が困るということはない。

郵便はどうか?今やヤマトや佐川のメール便は郵便と変わらない料金だ。全国に配達している。小包が小包が配達出来るのに信書を配達する能力がないなんてことがあるわけない。

こうして見ると三つの条件を満たす事業は一つもない。しかし、社会インフラとして「経済合理性がないから止める」と突然言われてはいけないから国営で事業継続を担保するのだという。つまり、民間企業は経済合理性がないと支店閉鎖などでサービス提供しなくなるというのだ。果たしてそうだろうか?

郵政三事業に共通しているのはサービスネットワークであるということだ。ネットワークを維持するコストは参加者の数に比例し、ネットワークの価値は参加者の数の二乗に比例する。価値は売り上げと思えば良い。つまり、民間企業にとって日本全国を繋ぐネットワークを維持することが利益の源泉なのだから経済合理的に一部から撤退するなんてことはしない。

かつて、交通網が未整備だったり通信技術が未発達だった時代、郵政三事業には大きな意味があった。当時日本全国に信書をどこにでも届けることが出来る郵便ネットワークを作ることは育ち始めたばかりの民間資本には無理だった。銀行も保険も精々地方都市までで、その周辺まではサービス網は広げられなかった。しかし、今ではネットワークを張り巡らす資本十分に育ち、既存の企業もいる。

つまり、時代が変わって郵政三事業が必要ではなくなったのだ。これは日本が豊かになったということの裏返しで大変に良いことなのである。郵政三事業が民営化されるとアメリカに200兆とも300兆とも言われるゆうちょと簡保の資産が奪われるという。「な〜に〜!やっちまったなぁ!アメリカが日本に強盗に来る」

実際には強盗には来ない。ゆうちょと簡保がアメリカに投資するかどうかは彼らの投資判断で、アメリカに投資するのであればそれが魅力的だったからだ。それが嫌なら、ゆうちょから貯金を引き出して、地元の銀行にでも預ければ良い。それか国債を買っても良い。ゆうちょに預けるのと結果は同じだ。

ゆうちょや簡保は投資先が国債に限られるので正しい投資判断能力がないというのは賛成出来る。野放図な投資がされないように、ゆうちょ自身が投資審査委員会などで査定をするべきだろう。金融庁も放漫経営にならない様に監視を強化すべきだ。その意味でメガバンクの頭取経験者が日本郵政のトップに就くのは当たり前のことだ。

「郵政民営化でゆうちょと簡保の金がアメリカに流れる」という定説は、こうして見ると根拠に乏しいことが分かる。アメリカにも優良な投資先があれば流れるだろう。でも、それよりも魅力的な投資先が日本国内にもあるわけで、そういった資金ニーズの高い産業に真っ先に投資される様になるのだから良いではないかと思う。

他にも質問されたことがあるが、まずは郵政民営化が良いと思うわけ−というより、国営でやる理由がないと思うわけについて投稿。

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